2003年9月23日〜24日 劔岳 早月尾根


9月23日早朝、台風一過の秋晴れの中、剣岳を早月尾根から登ってきました。
富山駅に「急行きたぐに」で4時29分着、上市までの富山地鉄は発車まで1時間もあるので
タクシーで馬場島まで向かう。降り立った10人ばかりの登山者に相乗りをしないかと声を
かけるが、室堂、折立ばかりで馬場島はいない。トホホまた一人か、ダメもとでタクシーと
交渉する。一万四千円を一万円で交渉成立。上市からでも七千円ていどかかるようだから
一時間以上早く入れてこの運賃なら納得するが、やはりふところが痛い。

やっと夜が明けた、馬場島の駐車場はかなりの台数が止まっており準備中の登山者も何組
かいる。今日の予定は幕営装備を持ち、剣岳を越えて剣沢の野営場までだ。
ここ馬場島は標高800メートルに満たない。剣岳は2999メートル。標高差2200メートル
を越えて行かねばならない。12時間は掛かるだろう。必要最低限にザックはまとめたが
それでも15キロある。5時30分に「試練と憧れ」の石碑から早月尾根に取り付く。

尾根は緩急を繰り返し、果てしなく続く。赤布が高い位置についている。雪の深さを実感する。
道は200メートルごとに標識があるので目安になる。つまり200メートルを一合と思えばいい。




若者にすごい勢いで追い抜かれる。聞けば日帰りでピストンするそうだ。
2200メートルの早月小屋まで3時間、頂上には昼までには着くという。
この後も次々ピストンの登山者にかわされる。皆、例外なく若い。
こんなに山で若者を見たのは久しぶりだ。4時間掛かって早月小屋に到着する。


早月小屋と富山平野

このあたりから樹が低くなり視界が開ける。右に大日岳、左に小窓尾根、後ろは毛勝山塊と
富山平野さらに日本海が望める。最高のロケーションだ。
ここで一泊していけば楽だろうがそうもいかない。


大日岳

尾根はだんだんと岩場になる。小窓尾根の三の窓あたりの岩場もすごい。気は高ぶるが
小屋までがんばりすぎたのかペースがあがらずへろへろだ。吹き上がる風は冷たい。
ジャッケットを着て一息入れる。見えてきた頂上は遙かに遠い。



本峰


三ノ窓

鎖場が連続して出てくる。カニのはさみの手前でピストンして降りてくる登山者に出会う。
「ここから上は鎖場でこのルートの核心部です。気をつけてください。」
さらに下から追いついた若い男女二人連れにもがんばってと励まされる。
聞けば7時に馬場島を出発したそうだ。レベルが完全に違う。
一歩一歩、獅子岩の鎖場を必死で登る。もうすぐだ。



別山尾根


獅子岩の鎖場

13時30分ついに8時間の苦闘の末、剣岳の頂上に達する。甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根は
8時間30分掛かったが途中一泊している。一気に登った山としては最長だ。



剣岳

頂上にはだれもいない。完全にエネルギーを使い切ってしまったので大休止したいところだが
ある意味ではこれからが本番だ。普通、剣岳は荷物を小屋に預けて最小限の荷で登ってくる。
カニのタテバイとヨコバイという難関があるためだ。
幕営装備の詰まったザックでは通過に手間が掛かりそうだ。

おにぎりを食べただけで出発する。ルートは登りと下りを分離しているところが多い。
登りは白のペイント、下りは黄のペイントで誘導される。
難関のヨコバイの上に出る。タテバイは登り専用のため通らない。以前はルートを分離して
いなかったのでシーズンには渋滞していた。今でも動けない人がでれば同じだが。





カニのヨコバイ

足下はスパッと切れて高度感がすごい。こんなにすごかったかなと記憶を手繰ればガスで
視界がなかったのを思い出す。やっとの思いで平蔵のコルに出る。
避難小屋は土台だけで跡形もない。最難関は越えたがほっとすると事故を起こす。
疲れ果てているので集中力をとぎらさないように歩く。

年配のパーティが登ってくる。いまからだと日が暮れるよと注意するが無視される。
この先も前剣のピークまでいやらしい鎖場が連続する。


平蔵のコル付近を登る登山者

15時10分前剣まで来た。見下ろせばガラガラの急斜面が待っている。
登りでは一番大変なところだ。ここを武蔵のコルまで下ってから一服剣までわずかに登り返して、
さらにくろゆりのコルに下れば剣山荘まですぐだ。がんばろう。



鹿島槍ヶ岳


立山


針ノ木岳



剣山荘に16時30分到着。ここに泊まりたかった。しかしここにテン場はない。
小屋に泊まればなんのためにテントを背負ってきたのか分からない。
剣沢をへだてた別山平にある野営場まで歯を食いしばって歩く。

17時ちょうど到着。広いテン場に5張りのテントがある。剣沢小屋の受け付けに行くと
シーズンが終わったので無料だと言われる。その分ビールを買い足す。
テントを剣の方向に向けて張る。夕日に前剣が映える。




予報通り天気がくずれる。夜半過ぎから時々、雨がテントをたたく。
翌朝、雨はやんでいるがいつ降り出すか分からない。剣は時々雲に隠れるがまだ見える。
何人か剣に向かって出発する。今のうちに手早くテントをたたみ室堂に下山する。

みくりが池温泉の白く濁った硫黄泉に600円はらって入る。窓越しに大日岳望める。
観光客はたくさんいるが温泉に入る人は少ないとみえて湯船を独占した。



剣沢からの劔岳


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