2001年5月7日〜8日 鹿島槍ヶ岳


7日大阪駅を急行ちくまで出発、登山者は2,3組しかいない。
ゴールデンウイークは終わったとはいえこれから休みの人も
いるからもう少しいるかと思ったがこんなものか。
松本で新宿からの急行アルプスに乗り換える、こちらも登山者
は少ない、それもみんな降りてしまう、上高地に向かうのだろう
穂高で燕岳に行く夫婦が降りてますますさびしくなる。

天気もすぐれないおそらく雨中の行動となるだろう。
予想どうりというかやっぱりというか大町の駅頭に立ったのは
自分だけだった。タクシーが見すかしたように
「誰もいないよ、お客さん一人だけ。昨日もいなかったよ」
“がっくり”一人でタクシー代を負担するのは痛いがしかたがない。
それでも運ちゃんは扇沢出合までなら片手にするからと言う。
案の定フロントガラスに雨が落ちる。それでも鹿島槍の双耳峰はよく見えている。

ゴールデンウイーク中もみんな車で来てタクシー利用者は少なかったとこぼす。
夏休みまで当分静かだそうだ。下山したら電話をくれたら
すぐ来ると言うが扇沢はドコモはOKだがJフォンは圏外だった。

6時出発、23キロの荷が肩にくい込む。小降りなのでとりあえず
カッパなしで行く、柏原新道を1時間ほど登った所で南尾根に取り付く
ようにという指導標がある。ていねいに尾根をはずすな、赤テープを
見落とすなと注意書きがしてある。

すさまじい急登、雪はくさり踏み跡をたよりに足を進めるが
ズボッーズボッーとはまり込む。枝をつかみ体を引き上げるがザックが引っかかる
小屋泊まりにして身軽に行くべきだった。後悔してもあとのまつりとはこのことだ。

行けども行けども急登は続く4時間ほど登った所で4人パーティーと出会う。
「まだまだ掛かりますよ、昨日冷池小屋はわれわれだけでした」
それでも気を取り直して踏ん張る。5時間30分歩いてやっとジャンクションピークにたどりつく。
雨がひどくなりガスも巻いてこの先のルートの状況が判然としない。
このあたりは平坦でガイドブックにも幕営適地とある、
整地した跡もあるので今日はここまでとする。

降りて来る人も登ってくる人もいない、この山域にいるのは自分だけだ。
携帯も通じる、ラジオもよくでるので寂しさは感じない。
雨が一晩中テントをたたく。

4時起床しかし雨がやんでいない。シュラフにもぐりこむ。
5時雨の音がやむ、外をのぞくと一面大雲海だ飛び起きる。


安曇野の雲海

テントはそのままにサブザックを持って5時20分出発する。
左手に種池小屋がすぐ近くに見える。爺ガ岳南峰に続く尾根
に出ると夏道が出ている。頂上まで雪がないようだ。
履いたばかりのアイゼンをはずす。


ジャンクションピークの我がテント


6時30分南峰に到着。安曇野は雲海の下、鹿島槍は雲に隠れている。


種池小屋が見える 立山方向

立山・剣も雲に隠れているが三の窓は見えている。冷池小屋までのルート
は冷乗越付近をのぞいて雪がない。7時中央峰着、冬衣装の雷鳥がすぐそば
まで来る。カメラに収めたがどうも調子がよくない結露させたのがまずかったか。


蓮華岳は雲の中


8時冷池小屋着、声をかけたら男女5人が現れた。やはり昨日は泊り客はいなかった。

鹿島槍までのルートを確認する。2時間ていど掛かるようだ。
今日中に下山するにはぎりぎりだ。直ちに出発、小屋の上部に雪が残る
ていどで布引岳の登りに掛かると雪はなくなる。しかし振り返って息をのむ。
今歩いたルートに大きく雪庇がはりだしている。端によらなくてよかった。


雪庇

布引岳より上はガスの中を登る。10時20分頂上に飛び出す。
20年ぶりの鹿島槍、なにも見えないがその時もこんな天気だったのを
思い出す。雨の振り続く後立山縦走、重くなったテント、あれから20年経ったのか
その時の仲間で山を続けているのは自分だけだ。


鹿島槍南峰

感慨にひたる間もなく直ちに下山。雪庇が恐ろしいので慎重に下る。
小屋によって登頂記念のビールを買う。「越冬ビールはどうですか」
「期限切れなんで400円にします。今年荷上げしたビールは550円です」
越冬ビールはうまかった。


剣岳 これが限界

爺ガ岳南峰にもどるとスキーを持った2人組みがいる。扇沢をくだるそうだ。
雪がくさってエッジがきかないからたいへんだろう。
2時ジャンクションピークのテントに戻る。

撤収して2時30分下山開始。すぐに急な下りになる。登る時は分からなかったが
ルートは地図上の南尾根から右に延びる支尾根を下る。扇沢ロッジがよい
目標になるので間違うことはないと思うが見通しが利かない時は注意が必要だ。

疲れて足の踏ん張りがきかないのでなんどもつんのめる。よくもこんな所を
登ったものだ。5時20分やっと扇沢出合にだどりつく。実に12時間ろくに休憩
も取っていない。完全にへばった。5時55分の最終バスに乗るべくターミナル
までの約1キロが実につらかった。


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